俺たちのプレイグラウンド

 誰でも自分のナワバリというか、居場所を持っていると思う。具体的な場所じゃなくても、草野球だとか、趣味での会合が居心地が良いということも含まれるだろう。僕の父親を見ていると、おそらくソフトボールが居心地が良いようだし、たまに行くヘラブナ釣りも自分だけの領域なんだと思う。

 僕のようにいい歳をして実家者の独身男は、家に居心地のいい居場所なんてあってはいけないと思う。でも居心地は悪くないし、リモートワークで前にも増して家にいる時間は長い。それでも外に居場所がある。いくつかの酒場がそれだ。緊急避難所のようなものと言いつつ頻繁に顔を出している。

 子供の頃は学校と家がすべてだった。たまに友達の家に遊びに行くこともあるが、それは他人の家なので自分の居場所はない。それが、少年野球を始めた頃から、外にも居場所ができる。野球のグラウンドは、練習の日以外は遊び放題だ。雑な空き地よりも整備されているので比較的安全でもある。

 それでも僕らは、雑な空き地で遊ぶのをやめなかった。雑な空き地は僕らのもうひとつの学校だ。いろんなことを教えてくれる。その頃の僕らは雑な空き地のことを〈草むら〉と呼んでいた。僕の生まれ育った地域は草むらがそこら中にあった。それらは、何かを建設する前の寝ている土地だった。

 ほとんどの草むらは、敷地の手前に資材置き場のような一画があり、奥には雑草が生い茂った適当な空き地があった。そこには捨てられたスクラップ寸前のクルマや、サビまみれの廃材などが捨て置かれていた。雑草で視界が悪いせいで危ないのだが、子供の好奇心はそんな危険を面白がるものだ。

 いわゆる秘密基地というのを最初に作ったのは、その草むらに捨てられたクルマの中だった。近所の捨て猫をこっそり飼おうとしてそこに置いておき、餌をあげようと次の日に行ったら息絶えていた。可哀想というよりも「早くね?」と思ったものだ。愛着が湧く以前の不幸なので悲しめなかった。

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猫を飼ったことはないが、住むのはいつも野良猫の多いエリアだ。