高僧が香草を構想

 好き嫌いが分かれるパクチーに限らず、香りの強い葉もの野菜全般が好きな草食系中年の僕。いや、草食系という言葉は野菜好きを表するものではなかったな。でもベジタリアンだと、肉を食わないように思われそう。どう思われても構わないが、肉も野菜もなんでも食べる。昆虫以外はなんでも。

 むかしから異境を旅するようなTV番組が好きだったので、その手の番組がたまに紹介する昆虫食は見慣れている。とはいえ、何度も見て慣れたからと言って自分が食べられるワケではない。将来の食糧問題を考えると昆虫食は大事だという説もあると聞く。でも、それはそうなってから考えたい。

 かつて僕も、多くの食わず嫌いと同様にパクチーを食べられなかった。その頃、同じようにパクチーを食べられない人間が「カメムシの匂い」と言っていたのを覚えている。確かに近い匂いはあるのかもしれない。カメムシの匂いを記憶するほど嗅いだことはないので確かではないが、想像はつく。

 で、パクチーを食べられるようになった今、僕は果たしてカメムシを食べられるのだろうか? 答えは即答で「否」である。なぜなら、パクチーは食用として栽培されたものを食べているワケだが、カメムシは人間の食事として作られた生き物ではない。それに、果たしてカメムシは美味しいのか?

 昆虫食は、野生で生き残るには必要な栄養が得られると聞いたことはある。それは、さいとう・たかをの「サバイバル」みたいな世界になった時のことを想定したような話だと思っている。死なないための最低限の食事なのだ。生きる知恵として持っておきたい情報だが、まだ実践する必要はない。

 まあ、何にせよ僕がカメムシを食べる必要はないのだが、酒場の常連でやたらと僕に昆虫食を勧めてくる人間がいる。あまりにしつこく勧めるので、彼を見ると少しだけ昆虫に見える。独特の天然ウェーブがかかった髪型が昆虫の羽に見えるのだ。心の中で「昆虫食の権化・蟲の王」と呼んでいる。