スピリッツは割って飲め

 僕はビール以外の飲み物をあまり飲まない。だから痛風を発症した。本当にビールだけを飲み続けるので周りから不思議がられる。「普通は最初の一杯だけだよ」とよく言われる。ビールは高いので割り勘だと不公平だと不満を言った人間もいる。でも、そんなの関係ない。ビールが一番旨いのだ。

 それでもビールだけだと酒場の楽しみが広がらないような気もしていたので、30歳を過ぎた頃から別のフェイバリット酒を探してもいた。芋焼酎が注目されてプレミア物の銘柄が出はじめた頃だったので、その辺りも試してみた。悪くはないが、ビールに慣れた喉にはチビチビ飲みがもどかしい。

 その当時は、チープな佇まいを売りにした「モツ煮とホッピー」が大量消費されそうな飲み屋もちょこちょこ見かけるようになっていた。もちろん古くからの飲み屋街に行けばよくある店のスタイルだが、そういう店のオマージュ版が都市郊外にも増えてきたのだ。もちろん値段の設定も安いのだ。

 よく飲みに行き、大量に消費する者にとっては、安くて旨いことが何より大事だ。そう言う店ならビールも多少は安いのだが、マナーというか、場の空気としてはホッピーを頼むのがスジだ。ホッピーはビールの代用として飲まれていたものだ。最初は場の空気に従ったが、すぐにビールに戻った。

 その後、ここ数年もそうだが「ハイボール」が幅を利かせてきた。その一方では、東京の東側のダウンタウンに行くとよく見かける「下町ハイボール」という似て非なる飲み物もある。普通はウイスキーソーダ割りのところを、焼酎のソーダ割りに梅シロップを混入させて風味付けする類似品だ。

 このように、ビールと双璧をなす飲み物を探す旅を続けていたのだが、そんな中で「これは」と思っていたのがスピリッツだ。中でも「ラム」が旨いと感じられるのだが、そこには多少のカッコつけもある。カクテルのベースとして用いられることが多いが、これをロックで舐めているのが好きだ。

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酒場を求めて都内を開拓しようと思ったが、近場の北千住で早々に挫けた。