カビの生えた思い出 

 よく行く居酒屋に、店が終わった後に聴く用のポータブルレコードプレーヤーが置いてある。それを見て、数人の常連が自分のレコードを持ち寄って聴いていた。そういえば我が家にも「レコードがあったよな」と思い屋根裏収納を探してみると、カビくさいレコードが数枚ほど出てきた。

 LPは父親の趣味であるグループ・サウンズの実力派「ゴールデンカップス」のものが多かった。その中から、有名な「長い髪の少女」が入ったものをチョイスした。あとはジェームス・ブラウンの「HELL」という原色のイラストが不気味でカッコいい盤を選択。これも父親のものだ。

 僕が学生時代、メタルに飽きて家にあったJBのこのアルバムを聴いてすごく気に入ったのを覚えている。なんとなく世界の広さと、視点を変えれば見えるものを意識した瞬間だった。なぜなら、そのアルバムは僕が幼稚園児の頃から家にあって、いつでも聴こうと思えば聴けたのだから。

 僕はよく音楽誌を読むのだが、ブラックミュージックの名盤にこの「HELL」が選ばれているのを見たことがない。JBの必聴盤は他にもあるので、ちょっと忘れられた存在なのだろうか。でも、僕にとっては特別な1枚なので、これを聴いて気にいる人がいたら嬉しいと思って選んだ。

 あとはシングルを数枚引っ張り出してきた。僕のお気に入りは沢田研二の「勝手にしやがれ」と「憎み切れないろくでなし」だ。やっぱカッコいい。カッコいい路線ではもんたよしのりの「ダンシングオールナイト」と「デザイアー」も選んだ。特にデザイアーは勢いがあって好きな曲だ。

 ただカッコいい曲ばかりでは面白くないかなと思って、昭和を代表する珍曲だと勝手に思っている吉幾三の「俺ら東京さ行くだ」も忍ばせておいた。昨日も店の営業が片付いた後で、プレーヤーを引っ張り出してきてそれらを聴いた。店主が吉幾三を2回聴いていたので気に入ったようだ。

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古い物にしか出せないビンテージ感は確かにあるが、それは劣化でもある。