昼下がりに撤退せよ

 昨日、都内のお客さんから仕事で呼ばれた僕は、先日来の在宅業務用対策が無駄にならないように軽く交渉した。まあ、簡単に言えば「家でもできますよ」と提案しただけのことだ。ギャラが日当換算なので、どうやって割るのか不安ではあるのだが、とりあえず「家でどうぞ」という話になった。

 ほとんどの酒場が夜間の営業を休んでいるのだが、しばらくしてランチやテイクアウトを始めた。ランチタイムは換気しながら、席を離して座らせる形にしているという。あまり客は入らないけれど、何もしないよりは開けていた方が心の健康には良いのだろう。そんな店のランチ時間に訪問した。

 食事も戴きたいが、その店では「ノマドワーカー歓迎」を押し出していたので甘えた。先ほど仕事先から渡されたデータを元に、酒場のカウンターで業務に没頭する。昼営業していることが浸透していないし、時節柄もあり、客足は芳しくない。その方が僕的には安心感があるが、店は困るだろう。

 昼過ぎから夕方まで仕事に没頭したが、やはり集中力は続かない。何も頼まないのも心苦しいので、どうしてもビールを頼んでしまう。多少の飲酒でも仕事には支障をきたさない。それは何度も確認済みだ。絶対にクルマに乗らないし、客先にも行かない予定の日は、出先の飲酒は当たり前なのだ。

 その店の閉店時間が近づいてきたので、キリのいいところでパソコンを閉じた。最速の「終業後のビール」を注文して、ひと心地ついた。ふとカウンターに目をやると、知った顔がチラホラと集まっていた。席を隔てているので集まってはいないか。散見された。みんな疲れているし、参っている。

 チラッとでも顔を見ると、みんなが励ましてくれる感覚がある。エスエヌエスだと言葉だけになってしまう。言葉は不器用で、強い言葉しか目に入らなかったりする。こんな時に強い言葉は要らないし、優しい言葉も真綿で首を絞めるような息苦しさがある。少し離れていても、目を見れば伝わる。