餌を転々と置いて誘導する

 小学生の頃、僕の通学路は学校の裏門からのアプローチだった。今では東西南北を理解しているので、あの門は東門に当たると思う。南門が正門とされていた。そちらは常に日が差し込んでいるので、明るく、校庭を突っ切って校舎に向かうアプローチとなるので「正規ルート」という感じがする。

 その正門に対して僕が使う東門の方は、当時は別に裏門という感覚はなかった。生徒数も、そちらの門を使う生徒の方が多かったような気がする。ただ、その門を入ってすぐ給食の搬入口があったので、昼前に給食センターのトラックがプラットホームにドッキングする姿を見ると裏門感は深まる。

 日当たりの面から見ても、下校時間になると校舎の影が長く伸びて暗いのだ。落ち込んで下校する時などは、学校から追い返されたような気分を味わうだろう。落ち込んで下校したことがないので、その気分は後付けに過ぎないが。下校時間になると、校門前に物売りが張っていることも多かった。

 あの物売りからバカ高い教材セットを売りつけられた生徒は数知れず。僕も、特大の消しゴムが欲しくて親にねだってみたが、そんなくだらないものを買ってはくれなかったし、僕も買わなくてよかったと思っている。そのように「裏」門にありがちな学校の暗黒面を背負わされる宿命にあるのだ。

 その下校時に、まるで僕が最後の生徒だったかのように、前後に誰も人がいない状況が時々あった。誰もいないのでサッサと歩いて帰ればいいのだが、道の両サイドの側溝を見やると、雑誌のページをちぎった紙切れが転々と見えていた。遠目にもヌードグラビアと分かる。誰かのイタズラだろう。

 最初のページを凝視しては次のページに進み、そのようにしてゆっくりと歩いた。もちろん、立ち止まりはしない。これがイタズラだと理解していたので、見咎められないようにさりげなさを装ってはいた。でも、子供の迂闊さは隠し様もない。左右の側溝をジグザグ歩く僕は、明らかなスケベだ。