衰えても良い能力

 久しぶりに飲酒したら、しこたま酔っ払ってしまった。時間を忘れて飲んでしまった。酔いすぎた翌日は、酒場に再訪して「粗相はなかったか」を確認することがある。以前なら「え、そんなに酔ってましたか?」と聞かれることが多かった。でも、昨日の再確認では「酔ってましたね」との言葉。

 平時でも何を話したかなんてことは忘れてしまうのだけれど、後で聞くと「ああ、言いそうなことだな」と納得できることが多い。酔っ払って話すことでも、普段の自分と地続きの言葉である。どこかで感じたことが、酔いに押されてポロッとこぼれるのだ。だから、自分の言葉として認識できる。

 昨日の再調査によると、あまり自分で言わなそうな下ネタを叫んでいたという。その場に知った顔しかいなかったから、甘えてしまったのだろう。ただ、その言葉が非常にセンスがないというか、下品なものだった。それで、店主から「酔ってましたね」としっかり釘を刺されてしまったのだろう。

 その上、その店ではビール1杯しか飲まなかったという。安い客だ。それを聞きに行った昨日にしても、二日酔いで調子が上がらず、結局2杯で帰ってきた。粗相の詫びを兼ねての訪問なのに、詫びにもならない。ただ、ひとつ確実に言えるのは、僕の「飲酒量のキャパ」が衰えてしまったことだ。

 断食した人が、普段食に戻すのに段階的に調整すると聞いたことがある。酒も、段階的に量を増やさなきゃいけないと、普通に考えてもそう思う。でも、そこは酒場。魔力がある。グラスを干せば「おかわり」と言い、それの繰り返しが大量飲酒に繋がる。数えながら飲むなんてできやしないのだ。

 ここ数年の僕には、常に「適量」の問題があったと思う。酒も、食事も、運動も、自分に必要かつ適した量を超えるか、満たしていないのだ。僕が欲しい量で考えるなら、それも満たしてはいないのだが、それを満たすと完全に破裂してしまうだろう。破産もするだろう。根っから強欲な男なのだ。

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夜の街は誘う。底なし沼へと……。