悲しき誠実

 一般の人たちの会話でも、ボケとツッコミ的なお笑いの立ち位置のように話していることが多くなった。TVではバラエティ番組が増加し、芸人さんのやり取りを日常的に見る機会が増えたからだろうか。まあ、ボケとツッコミと言っても、固有のツッコミワードが使われているに過ぎないのだが。

 僕は面白いことは好きだが、自覚する自分の性格は真面目な方である。不真面目な部分もあるが、総じて「真面目であろう」と考えている。それは、誠実と言い換えても良いと思うし、もっと言えば普通であることだ。普通の人は真面目だろう。つまり、僕はごく普通の人間であると言いたいのだ。

 その上で、たまに人から「真面目か?」とツッコまれる。芸人さんが使う定番のツッコミワードだ。言われるたびに違和感を感じる。たぶん、コチラが相手の想像以上に丁寧に受け答えしたから、そこまで「真剣な話じゃないよ」というブレーキを踏んでくれたのだろう。そういう気遣いは感じる。

 そもそも、一般の人が使うツッコミ言葉は、会話をタイトに編集してくれるものだ。ダラダラと続いてしまいそうな「つまらない話」をビタッと切ってくれる。それに気付いて話題を変えないと、空気が読めていないわけだ。空気を読まない方が面白い場合もあるが、それは伝わらないことが多い。

 ただ、一般の人たちがタイトに編集された会話をする必要はない。普通に気になることをお互いに聞いたり、近況報告をするだけだ。そこにピリッとした刺激を加えたくて、ちょっとしたギャグやワイドショー的な時事ネタを放り込んでくるのはアリだ。それは、会話を飽きさせないためのテクだ。

 僕が「真面目か?」とツッコまれるのは、たぶん話がつまらないからだろう。つまらない話から、徐々に誘導しようと思って話始めるのだが、現代人には時間の余裕がないらしい。たっぷりと間を使うオールドスクールなスタイルは、待てないのだ。よく考えたら僕も待てない。でも、ガマンする。

f:id:SUZICOM:20110204153648j:plain

タイトに編集された会話は、核心への侵入を阻止する装置でもある。