転がる先に幸あれ

 仕事において「自分にしかできない」ことは無いと思うが、自分しかやりたがらない仕事はあると思う。いや、別にコチラも「やりたがっている」わけじゃないのだが、誰もやりたがらない仕事が回ってくるということだ。業界内での持ち回りのような感じだが、その当番が他所に行かないだけだ。

 僕のようなフリーランス者にとって、ご指名がかかるというのは有り難いことでしかない。ただ、そのご指名の段階で先方から「他は誰もやりたがらないので」と無駄なエクスキューズを足されることがある。それを言うことで僕のやる気が上がるわけないのだが、ある種のマウンティングなのだ。

 本来なら僕のような末端のフリーランス人間を使わずに、自社の人間で対応できることだ。でも、この件だけは内側の人間の手をわずらわせることなく済ませたいから「使ってやった」というニュアンスが言外に含まれている。少なくとも、それを言われた僕には「含み」を感じられる依頼なのだ。

 それでも毎年、同じ時期に回ってくる仕事なので、頭の中には予算計上してはいる。マウントを取るだけのことはあって、他の仕事よりもギャラの比率は多少高い。それで許せるという話ではないが、許せないと断る話でもない。僕にとっては、他の仕事と同様の業務に過ぎない。そういう担当だ。

 この「なしくずしフリーランス生活」も限界は近い。そろそろ地に足をつけた生活をしたいものだ。生活に音楽とアルコールがあれば、他の贅沢は要らない。それくらいの欲なら仕事を選ばなければ得られそうなものなので転職サイトの情報を見てはいるのだが、年齢制限という壁は超えられない。

 まあ、転職サイトで見ている情報は「仕事を選んでいる」から年齢制限があるわけで、条件を「年齢制限のない会社」だけで探せばもっと見つかるはずである。そうなると、この10年ばかしのフリーランスで身につけた技術と関係ない仕事に就く可能性もある。いや、それが転職というものだよ。

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クリシュナのバターボール。絶妙なバランスで保たれた「転がらない岩」。