イントロが聴こえる

 昨日も酒場に顔を出そうと、前日の夜から決めていた。正月だから「飲んじゃえよ」と、自暴自棄な心の声に誘われていた。半ば以上その気でいたのだが、昼過ぎから酒場は開いているというのに体が動かない。僕の中のなけなしの理性が止めているのか、それを超える怠惰に支配されているのか。

 おそらく後者だと思うが、飲み過ぎや、寒くて出る気がしないなどの理由から家にこもっていた。あまりないことだが、本当に一歩たりとも家から出ていないし、夕飯を食べるまでは自室から出ることもなかった。ネットにアップされた動画が面白くて、出るタイミングを失ってしまったのである。

 その動画は、アイドルがカラオケをするネット番組を、おそらく公式なアカウントから配信されたものだったと思う。素人や歌ウマさんのカラオケバトル番組には興味ないけれど、アイドルが番組とはいえ比較的リラックスして歌う様を見られるのはレアというか、単純に楽しく見ることができた。

 僕は別にアイドルファンでもないし、個人を熱心にフォローするような情熱もない。ただ、その界隈に熱が高まっていることを情報として知っている。そして、僕が好きなタイプの美メロとアイドルの楽曲制作陣が作り出すものが近いことも知っている。だから、良い曲だなと思うことはよくある。

 僕は、知らないことは宝だと思っていて、いつか知ることができる喜びをいくつも備蓄させている。でも、その備蓄は忘れる。だから、備蓄したことを覚えているうちに、その知らないことを知ろうとする努力はしておきたい。備蓄が不良在庫になる前に、記憶として固定化させる必要があるのだ。

 この動画のチェックも、その努力の一環と言える。ただ動画を見るだけの行為を努力と呼ぶことに違和感はあるが、それは体育会系独特のセンチメンタリズムだと思う。そのカラオケ大会を見ているうちに、ほとんどカラオケに行かない僕でも歌いたくなった。できれば女子と、歌の上手い女子と。

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記憶の湖は、いくつもの賞味期限切れの備蓄で濁っている。