お昼の風景

 蕎麦屋の佇まいというのは、僕が小さい頃から今に至るまで変わらないような気がする。引き戸でガラガラと入店し、空いてる席に適当に腰掛けるように言われ、店の角のテレビに向かって座る。テレビを見たいわけじゃないのに、なんとなくその方角が上座のような感覚だ。そして、ひと息つく。

 女性のホールスタッフ(ここは年齢に関わらず、一律『お姉さん』と呼ぶ)が順番にお茶を運んできて、まずは注文を取る。相手のなりを見て「それで足りる?」とか「食べ過ぎじゃない?」と健康に気遣う風もある。僕はいつでも大盛りを頼むので、たまに並盛りで注文しても却下されたりする。

 混みあった店内では、狭い店内の窮屈な動線の間をあくせく動いている。その動きに合わせて注文しないと、動きを邪魔されて不機嫌になることもある。でも、忙しいからすぐ忘れる。と思ったら、あとで「さっきはゴメンね」とさり気なく火消しする。すべてにおいて仕事が早いお姉さんなのだ。

 そんなお姉さんのオペレーションを眺めながらの食事に元気はもらえるが、コチラもすこし疲れる。だから、混み具合がマックスな時間帯は外すことが多い。逆に、空いている時間にたまに来る客として認識されている。そんな、むかしから通っているような蕎麦屋で、昨日も遅めの昼食を取った。

 昨日はまだ昼の名残というか、遅めのランチ民がチョロチョロと出入りするので忙しさの片鱗は見られた。調理場から注文品が出てくる場所で、細かい下準備をしていた。その動きに無駄が多いというか、むしろ動くために作業行程を増やしているようにも見えた。これはクールダウンなのだろう。

 そこではいつも「鴨つけそば」の大盛りを頼むのだが、この大盛りの量が気に入ってたまに来ている。他のそばを頼んだ時に大盛りがイマイチだったので、鴨つけじゃないと心配で頼めない。そのうち、この店では「大鴨」を食べると決まってしまった。だが、連れのカレー南蛮は超旨そうだった。

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これが僕の好きな大鴨ことかもつけそば大盛り(950円)だ。