薄よごれナミダ中年

 むかしからインタビュー記事や、TVの対談番組が好きだ。ほとんどは何かのプロモーションで話しているのだけど、不意にのぞく素顔を見られるのが良い。そして、自分なら何を聞くか、どうやって懐に飛び込むかを考えるのだが、恐らくできないだろう。特に話す対象が好きな人なら。

 この場合の好きは、いわゆる「ファン」ということ。僕は熱心に個人を追いかけたことはないけれど、ファンと言っても差し支えなさそうな対象は何人かいる。アルバムを買ってライブを観に行くとか、活動を逐一チェックしているような対象だ。でも、それらに対しては常に受け手である。

 こちらから働きかけて、会いたいとか、好意を伝えたいという思いはない。それは別に、スターを幻想のままに留めておきたいというわけじゃない。たぶん、僕が彼らに会えたとしても、泣けてしまってマトモに会話もできないと思うから。なぜ泣くのか、それは抑えきれない感情の発露だ。

 ライブでも、ふと「良い曲だなぁ」と感じてジワッと泣けてしまう時がある。スタンディングの会場で、周りがガチャガチャしている時でも、瞬間的に感情が持っていかれてしまう。それは、現場の喧騒の中に優しい言葉とメロディを投げることで、ストレートに「愛だな」と思えるからだ。

 ただ、最近の僕は感情の制御が危うい時がある。ライブで泣けるのは理解してもらえると思うけれど、TVでコントを観ている時にグッと来る時がある。そのネタの作りというか、笑わせようとする努力が「優しいなぁ」と感じる時があるのだ。それも結局、広い意味での「愛」なんだろう。

 とにかく、離れた場所で観ていても泣けてしまうので、僕は好きな対象と面と向かって会うのが恥ずかしいのだ。今まで会えたこともないが……。その代わりをインタビュアーがしてくれているので、そこには敬意と感謝しかない。彼らも、感情を抑制して、相手と対峙しているのだろうし。

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毎年5月末に行われる音楽フェスの模様。楽しいが、年々体力的な不安も……。